クリフォード・ジョーダン Clifford Jordan In The World

Clifford Jordan

real name : Clifford Laconia Jordan, Jr.
1931年シカゴ生まれ、1993年ニューヨークにて没


Strata East SES 1972-1
1972 STRATA-EAST RECORDS,Inc

■ 人となりとジャズシーンでの軌跡

クリフォード・ジョーダンは、ハード・バップ期からポスト・バップ期に活躍したジャズ・プレイヤー。

テナー奏者としては、その実力ほどに高い評価を得ることはなかったけれども、ハンク・モブレーなどと並んで隠れファンも多い。いわゆる「B級テナー」を代表するプレイヤーのひとりです。

彼の奏でるテナー・サックスは、土着的な野太いトーンで、しかも深い味わいのあるブルージーな音。何回聴いても、ジャズはやっぱり黒人のものであることを痛感させられます。

故郷シカゴでマックス・ローチやソニー・スティットらと競演して腕を磨き、1957年、ニューヨークに登場するや、ブルー・ノートから#1500シリーズに3枚のリーダー・アルバムをリリースしています。だから、実力についての説明は要りませんよね。

その後、1960年代にはマックス・ローチのグループやミンガス・ワークショップに参加し、’60年末から’70年代にかけてスタンリー・カウエルらと共に、ストラタ・イースト・レーベルの設立に参画しています。黒人としてのアイデンティティーを追求することを標榜したストラタ・イーストでは、プロデューサーとして手腕をふるいつつ、プレイヤーとしても渋い演奏を残しています。ちょうどこの時代が最も脂ののりきった時代であったと思います。

’80年代以降も地道な活動を続け、ミューズやスティープル・チョイスなどからアルバムをリリースしています。晩年は、自らの名を冠したビッグ・バンドを率いて後進の育成にも尽くしたようです。

生涯をつうじて地味でしたが、自分の音楽観を大切にし、商業主義や流行に左右されない姿勢を堅持し続けた人です。影響を受けつつ同時代を生きたコルトレーンやロリンズほど、スポットライトのあたる舞台に恵まれなかったのは残念ですが、黒人の美意識と歌心を失わなかったいぶし銀のようなプレーヤーであったと思います。

■ これぞ最高傑作!

 クリフォード・ジョーダンは、ストラタ・イーストに、2枚のリーダー・アルバムを残しています。なかでも1972年に発表された『クリフォード・ジョーダン・イン・ザ・ワールド』は、巨人エリック・ドルフィーに捧げるために自らプロデュースしたドルフィー・シリーズの記念すべき第1弾。しかも、大傑作でありながら、あまり知られていない名盤。
演奏の収録は’69年の春ですので、しばらくお蔵入りになっていたようです。録音状態もあまりヨイとはいえませんが、キング牧師暗殺で混迷する公民権運動、泥沼化したベトナム戦争など、混乱を極めた’60年代末のアメリカ社会の空気感や情景がよく伝わってきます。

収録されている4曲とも彼のオリジナルです。共演は、ドン・チェリー、ウィントン・ケリー、ジュリアン・プリースター、ケニー・ドーハム、リチャード・デーヴィスなどが参加しています。強力メンバーとの一期一会の名曲名演揃いです。

とくに、A面1曲目の「ヴィエナ」は、AAA+!!
曲の名は、VIENNAのスペルから推するにオーストリアの首都、音楽の都と称されるウィーンのことでしょう。17分10秒もある長い曲です。最晩年の愁いをおびたケリー節や、リチャード・デーヴィスとアル・ヒースのベースのバトルも素晴らしいです。が、この名演の引き立て役をひとりだけ挙げるならば、やはり狂気のごとくポケットトランペットを吹きまくるドン・チェリーです。フリージャスの極地のような音ですが、主題と絶妙に調和して曲のイメージをさらに高めています。

このヴィエナを最初に聞いたのは、北白川にあった「ふんじゃらむ」というジャス喫茶でした。エレクトロボイスの大きなスピーカーから大音量で飛び出してきた曲は強烈なインパクトをもっていました。比叡山に雪が積もった寒い日で、たしかストラタ・イースト盤がでた1972年か翌年のことだったと思います。

おもしろかったのは、むかし、別のジャズ喫茶でこの曲をリクエストしたときのほかのお客の反応です。VIENNAをすでに知っている人は別として、不協和音のようで妙に調和するドン・チェリーの怒涛のような叫びに耐えられなくなって退去する人が約8割というパターン。でも何人かは、レコードが終わってからジャケットを見にいき、パーソナルとかを確認する奇特なかたもいらっしゃいました。
#なるべくお客の少ないときを選んでリクエストしていたんですがねぇ・・・・・・。不愉快な思いをさせたかた、スンマヘン。

というわけで万人向けのお勧め盤ではありません。重くて暗いのが好きなかたは、チェックしておいてくださいませ。

■ 捜し続けてようやく手に入れたLP
そうはいっても、このLPの入手はきわめて難しい時期がずうっと長く続きました。SE盤の少しあとにトリオから国内盤がでましたが、ともにしばらくして廃盤になりました。ずいぶん捜しましたが手にいれることはできませんでした。都内ならば中古盤がたまに市場にでるらしく、捜索を頼んでいた知人が渋谷の中古屋で見つけて貰った時は、これでいつでも聴けると飛び上がって喜んだものです。捜し始めて20年が経っていました。

トリオ盤と相前後して手に入ったSE盤は、NYに買い付けにいった神田の中古レコード屋の店主が見つけてくれました。20年も捜して見つからなかったLPでしたが、運の良いときというものはそんなものです。

クリフォード・ジョーダンの没後、1995年ごろに、かつてストラタ・イーストからリリースされていた一連のLPがCD化され国内でも復刻されました。そのとき、この名演はなぜか復刻リストから除外されました。発売元に問い合わせたところ、いろいろと事情があるらしく誠に残念なことでした。

さらに歳月は流れて21世紀に入ってしばらくした2005年ごろ、晴天の霹靂が起こりました。CD化され国内発売されるという噂話が飛び込んできました。しかし、いつまでたっても現物が発売される気配はなく、あの話はガセネタだったかなと諦めかけたころにようやく発売されました。

すでにLPはSE盤・トリオ盤ともに持っていましたし、いつでも聴けるように自分でLPからデジタル化していました。新たに買う必要はありませんでしたが、再発にこぎつけるまでのご苦労を察し、CD化の快挙に敬意を表して1枚手に入れました。
今は、ネット上でいつでも好きなときに聴けるようになっているようです。いい時代になったものです。

CLIFFORD JORDAN IN THE WORLD

 Strata East SES 1972-1

This is the first of the Dolfhy Series Produced by Clifford Jordan

Side 1
1.VIENNA
2.DOUG’S PRELUDE
Side 2
1.OUAGOUDOUGOU
2.872

Personnel:
Clifford Jordan-tenor saxophone
Julian Priester-trombone
Don Cherry-trumpet*
Wynton Kelly-piano
Wilbur Ware-bass
Richard Davis-bass
Al Heath-drums*
*side one only;on side two;

Kenny Dorham-trumpet
Roy Haynes-drums
Ed Blackwell-drums

Recorded:Spring 1969
Recording Engineer:Orville O’Brion
Cover Layout and Design:C L Roberts
1972 STRATA-EAST RECORDS,Inc

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