地形図の折り方(1)

地形図の図式規程と図郭

紙の地形図には長年にわたって慣れ親しんできたし、ずいぶんとお世話になった。しかし、最近のデジタル化の波におされて、紙の地形図はどうも旗色がよくないようだ。
発行している国土地理院でも紙に印刷された地形図から、デジタルデータとしての地図情報へシフトしていく方針を明らかにしている。紙の地形図はこの先、いつまで販売されるのかよくわからないが、とりあえず地形図と折り方に関する覚え書きを兼ねてこの文を作成することにした。
以下は折り方を解説したハウツーものではないので、「地形図 折り方」の検索で来られた方は別のサイトをあたってください。

柾判の専用用紙

国土地理院が発行している紙の地形図には、むかしから「柾判」と呼ばれる大きさの専用の用紙が使われてきた。用紙には「三角点の記号のすかし」が入っている。地形図用に特別に調整した紙なのであろう。
柾判のサイズは縦46㎝×横58㎝でA2判より少し大きい。地形図は柾判の用紙に図郭線で囲まれて描かれている。

図郭線

図郭線とは、地図が表示される範囲を示した線である。地形図の図郭線は、図式規程が定める経緯線に基づいて決められている。
図郭の大きさは緯度によって多少異なるが、本州中央部付近で縦37㎝×横46㎝前後の大きさだった。「だった」と書いたのは、現在、新旧の2つの図式でつくられた地形図が混在しているからである。新旧図式は、整飾(レイアウト)や図郭の大きさも異なるので、話が少しややこしくなる。

2万5千分の1の地形図を例に説明すると、以前は昭和40年や昭和61年に制定された図式規程に基づいて、1枚の地形図には経度差7分30秒、緯度差5分の範囲を示した図郭が定められていた。

測地系の変更と図郭の拡大

平成14年に図式規程が改訂され、紙の大きさはそのままで図郭の範囲が少し広くなった。これは日本測地系から世界測地系への変更にともない、経緯線の位置が変わったことと関係している。
基準線である経緯線の位置が動いたため、従来の分割法と図郭の大きさのままだと測地系の異なる新旧図式の地形図を並べた時、接続部に帯状の空白部が生じてしまう。そこで図郭を大きくして地図の表示範囲をひとまわり広くすることで、測地系の変更によって生じた「地図の空白部」をカバーするようにしたわけである。
『地図の空白部』というと、エリック・シプトンの著作 “Blank on the Map” を思い浮かべてしまう。地理院にしてみれば考え抜いた末の妙案というか苦肉の策だったのであろう。

ユーザーからみれば、周囲に隣接図の一部も表示されるので、地形図と地形図の境界付近が見やすくなったというメリットがある。そのいっぽうで不都合な点も生じた。地形図の整飾(レイアウト)も大幅に変わったので、従来と同じ折り方ができなくなってしまったことである。
新しい図式に基づいた地形図への改訂作業はまだ道半ばで、完了までにはまだ何年もかかる見通しである。さらに2013(平成25)年からデジタルデータの「電子地形図25000」とほぼ同等の内容を多色刷りにした新しい2万5千分の1の地形図の刊行も始まった。

現在、複数の図式の地形図が出回っており、いささか迷走気味にも思える。

地形図の折り方

地形図の折り方は図式、とくに図郭と密接に関わっている。手持ちの地形図には新旧の図式が混在しているが、とりあえずここでは、少し古いが保有枚数の多い「昭和40年式」図式の地形図を中心に話を進めていく。

地形図を室内で使う分には、買ってきたそのままの状態、つまり柾版を広げた状態でもかまわない。しかし、屋外に持ち出す際には、通常、小さく折りたたんで携行することが多い。

折るときの留意点

地形図の折り方には、いろんな流儀というか、やり方がある。
その際、考慮されるのは次のような点であろう。

  1. 携行に便利なサイズであること
  2. 折り目によって紙(地図)を痛めにくいこと
  3. 携行時に印刷面が汚れにくいこと
  4. 隣接図をつなげて見やすいこと
  5. 折りたたんだ状態で、図名、図歴、隣接図名などの情報が見やすいこと

1.と2.は相反する要素である。折ったサイズが小さいほど携行しやすいが、その分折り目が増えて地図が傷みやすくなる。
3.は印刷面が内側になるように折ればよい。
4.は接合しやすいよう、まず図郭線で折り返してから小さく折る方式がよく用いられる。
5.は使う人それぞれで要望が異なる。図名だけわかればいいという人もいれば、図歴や隣接図名も見やすくしたいという人もいるだろう。

8ツ折りの例

例えば、登山をする人によく使われる折り方のひとつに8ツ折りがある。この折り方がベストかどうかは使う人によるが、広く普及している折り方のひとつだと思う。多少バリエーションがあるが、折る手順は次のとおりである。

  1. 図郭線に沿って山折りし、天地左右のまわり(整飾)の部分を裏返す。
  2. 左右方向を中央で山折りし2ツに折る。
  3. さらに残りをそれぞれ谷折りで2ツに折り、屏風のように4ツ折りにする。
  4. 天地方向を2ツに折って8ツ折りにして完成。
  5. さらに小さくするため、もう一度2ツに折る人もある。
  6. 最初の図郭線に沿って4辺を山折りする前に、四隅の角を三角折りして接続部をスムーズにする人もいる。
8ツ折りにした地形図8ツ折りにした地形図

これらは8ツ折りにした状態。右下にある「京都西北部」は、ポケットに押し込むためにさらに2ツに折った折り跡がついている。
地形図を使い始めた頃は、この折り方をしていた。たしかボーイスカウトで教わったものだと思う。
図名は隅のほうに小さく表示されていたが、それだけでは見分けにくいので、図名と隣接図の一覧表を手書きして使っていた。

『外図郭線』があった頃の折り方

昭和40年代前半に購入した地形図の多くは、「昭和30年式」の図式で作られていて、図郭線の外側に細線と太線で額縁のような『外図郭線』が入っていた。

外図郭線のある地形図図郭線の外側に『外図郭線』があった頃の地形図

最初の裏折りを図郭線ではなく、額縁の外側の太線で裏返していたので、隣接図と接合する時に額縁のような余白ができ、2枚の地図の間に分断が生じていた。
当時の地形図の図郭線の外側、つまり額縁のところには、等高線の標高や道路の到達先などが今よりもかなり細かく記されていた。そんなことから隣接図との接続よりも、額縁部分に書かれた情報を見ることを優先したのだろう。

図式の改訂と折り方の変更

2万5千分の1地形図のうち、古いものは昭和17年や昭和30年に制定された図式で作られてきた。1964(昭和39)年に2万5千分の1地形図で全国をカバーすることが決まり、翌年に「昭和40年式」と呼ばれる新しい図式が制定された。
これは2万5千分の1地形図専用の図式で、その後、1969(昭和44)年に細かい加除訂正が行なわれたが、1986(昭和61)年に改訂された「昭和61年式」までの約20年間にわたって適用された。

「昭和40年式」の図式は、それまで使われてきた「昭和30年式」の図式とはいくつかの変更点がある。折り方と関連する変更点を列挙すると、図郭の外に描かれていた額縁状の『外図郭線』がなくなり図郭が1本の線だけになった。また、図名・図歴・検索図などの表示位置も変わっている。

ただし、図式が変わってもすべての地形図が一斉に改訂されるわけではない。毎月数点~十数点ずつ発行される地形図から順に新しい図式が採用される。したがって昭和40年に改訂された新しい図式の地形図が流通しはじめたのは、昭和40年代の半ばごろだったと思う。

新しい図式の地形図を折るときは、山折りの箇所を外図郭線から図郭線へと変えた。隣接図との接合をよくして境界部を見やすくするためである。しかし、基本的な折り方は以前と同じやりかたで、天地左右の4辺を折り返し、横方向を4ツに屏風折りし、縦に2ツに折る方法だった。

その後も10年間ほどはこの折り方で折っていたが、1980年に折り方を少し変更した。

地形図の折り方図郭線の「天」と「左」の山折りを省略した8ツ折り

それまでとの違いは、図郭線の「天地左右」の4辺で山折りしていたのを、「地」と「右」の2辺だけにしたことである。この折り方だと地形図を広げたときに中央の上部に図名が大きく表示される。

「天」と「左」の2辺の折りを省略したので、折りたたんだサイズは少しだけ大きくなった。隣接図とつないで見るときには、上下に重ねればよいので、使用にはまったく支障がなかった。
この折り方は、当時、地理学教室の助手をされていたH先生から教わった。試してみると使い勝手の良い合理的な折り方だったので、さっそくこの折り方に改めた。

8ツ折りにした地形図図郭線の2辺だけを折ったもの(左)、4辺とも折ったもの(右)

折りたたんだ時はこんな風になり、図名・図歴・検索図も一目で確認できた。
さらに小さくしたいときは、半分に折れば大概のポケットにしまうことができる。

従来の古い折り方で折っていた地形図が何十枚かあったが、「昭和40年式」のものは新しい折り方で折り直した。以後、30年以上にわたって地形図の折り方はずっとこの方法を踏襲してきた。

地形図の折り方(2) につづく

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