(12) 自力復旧の橋 小田川

山あいに架けられた橋をわたって、鍬を担いだおじいさんが山仕事に出かけていきます。

川の真ん中あたりに橋脚があり、10メートルほどの橋板が2枚つながったこの橋は、長さ約20メートルほどの流れ橋です。大水が出たときに橋板をつなぎとめるロープはこの位置からは見えませんが、よく見ると橋の左側の空中に1本の電線のようなものが張られています。この電線のように見えるのは、この流れ橋を維持管理するために欠かせないワイヤーロープです。

橋をつなぎとめる以外にもロープが? ということになりますが、これは流された橋板を元の位置にもどすために使うロープなのです。2つある橋桁のうち、橋脚よりも向こう側の橋桁が長くて重く、元に戻すときに何人もの人手を要するため、この橋を利用している山仕事の人が、古くなった材木搬送用に使う索道の設備を流用してつくったそうです。

復旧するときの作業は、橋脚からはずれ落ちた橋桁にワイヤーロープから伸びるフックを掛け、下の写真のように手動のウィンチを使って行います。
過疎化がすすんだ山村には、いまや高齢者のかたとサルやシカなどの動物しか住んでいないのが実情です。ウィンチの力を利用してこのような仕掛けをつくっておくと、2~3人の人手があれば比較的簡単に復旧できるそうです。

過疎と高齢化が生んだ苦肉の策でしょうが、山を守りながら山村で暮らす人々の知恵と工夫には頭の下がる思いがします。


Memo
  • 小田川/愛媛県
  • 撮影:1999/05
  • 旧版公開:1999/05/18、改訂版公開:2017/04/18
  • この橋の写真を撮ってから約20年が経ちました。現状はどうなっているのかが気になって、Google Mapsの空中写真で確かめてみましたが、橋は跡形もなく消え去っていました。
  • 川の左岸と右岸を縫うようにして新しい国道のバイパスが完成し、この橋のあった場所の上流側と下流側にそれぞれ新しい永久橋ができています。
  • 古い橋にはもはや果たすべき役割がないのかもしれません。しかしながら、「自力でなんとかする」という考え方と機構を備えたこの流れ橋は、たとえ役割を終えたとしても残しておくべき文化的な価値があったように思えます。
  • コンクリート製の橋脚は河床の自然石を利用して昭和30年につくられたものでした。橋脚を含めて、跡形もなく撤去されてしまったのはまことに残念です。

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