(14) 恐怖の鉄橋 吉野川

わが人生、これまで随分とヤバイ橋をわたってきたけれども、この橋はそのなかのベスト5にいれてもいいような怖い橋。

四国を流れる吉野川を水源の石鎚山から徳島に向けてに下っているときに見つけた古い鉄橋。レンガと石でできた立派な橋脚に比べて、鋼製のトラスの部分は遠目に見てもか細い。
それもそのはずで、この橋は高松と高知を結ぶ国道橋として1911(明治44)年3月に架けられた旧吉野川橋。3連のトラス橋で、全長は105メートルもあります。自動車ではなく汽車がわたっていてもおかしくないような趣なのは、鋼橋の部位をつくったのが汽車製造合資会社と記されたプレートからもうなづけます。

1958(昭和33)年、下流側に新しい吉野川橋ができて国道橋として使命を果たし終えました。その後は幅員を狭めて人や自転車だけが通る町道の橋として第二の人生を送っています。実際に渡ってみると橋上からの眺めもよく、なかなか風流なものであります。

しかし、橋の真ん中あたりまで進んだとき、赤茶けた鋼製トラスが腐食して、垂直材(柱)に穴がいくつかあいているのを見つけてしまいました。穴ごしに川面や下流の橋が透けて見えるだけでなく、斜材(筋かい)も外れて鉄クズ同然です。

そんなわけで対岸からの帰りは振動をあたえないよう、抜き足差し足で戻ってきた次第。

帰ってから橋を管理している大豊町に聞いたところ、安全性についての検査を最近実施したので、歩行者が通るぶんには心配ないとのことでした。(注:1999年当時)しかし、久々に怖い思いをした橋でありました。

ちなみに、これまででいちばん恐ろしかったのは、富山県は剱岳西面の池の谷にある雪渓をのぼっているときにわたろうとしたスノーブリッジ(雪渓にできた下が空洞になった残雪の橋)。歩き出そうとしたその瞬間、大音響とともに跡形もなく崩れ去り、すんでのところでオダブツになるところでありました。


この古い橋のことが気になったので、もう少し調べてみることにしました。

その結果、鋼製の単純トラスの道路橋としては現存する最古のものであること、3連のトラスのうち中央部は支間長が51メートルもあり、明治時代につくられた同形式の橋のなかで、建設されたそのままの位置で現存している最長の橋であることなど、この橋がタダものではないことが判明しました。

土木遺産として、地域の財産となり得る価値があるのに、錆びほうだいの今の状態では、いつまで橋が残っているかわかりません。じつにもったいない状況だと思います。

【1999/06/23追記】

Memo
  • 吉野川/高知県
  • 撮影:1999/05
  • 旧版公開:1999/05/18、追記:1999/06/22、改訂版公開:2017/04/23
  • その後、土木学会から『土木遺産』に指定されたものの、残していくための技術的・経済的な支援はありません。その後も鋼材の腐食は進みましたが、修復や補強の手は入れられませんでした。
  • いつのころからか知りませんが通行禁止の措置が講じられ、人道橋としての役目も終りました。
  • 土木史や産業史のうえで重要な意義を持った工作物ではありますが、国から橋を譲渡された町には、荷が重すぎたのかもしれません。定期的な塗装が必要な鋼橋を維持管理するための特別の予算もなく、また専門的なノウハウも持っていなかったはずです。
  • ですから管理主体が町に移った時点から崩落への道を歩み始めたと言うべきかもしれません。莫大な費用を投じて抜本的な手立てを講じない限り、いつか崩落する日が来るのは避けられないでしょう。残念ではありますが、手遅れのようです。

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