(24) 精霊送り 佐波川

灯篭流しは、お盆の頃、各地の川で見うけられる精霊送りの行事です。

先祖の霊は、普段、生前の住処からあまり遠くないところ、たとえば町や村から仰ぎ見ることのできる秀麗な山にいて子孫を見守り、お盆になると子孫の家を訪問すると信じられてきました。そして盆の供養をすませた後、先祖をもとの場所に送り帰すために、送り火が焚かれ、精霊を送る灯篭や舟が川に流されます。
山から迎えた霊を川に流すのは、一見矛盾しているようにも思えますが、信仰のうえでは山も川も相い通じるものと認識されてきたからです。

お盆が終わろうとする日の夕方、防府市を流れる佐波(さば)川でも、市内にある寺院団が主催する盆送りの行事が開催されました。会場となった河原では、先祖の精霊を送る灯篭流しに先だって、この1年間に捕獲した鮎など佐波川の川魚を供養する法要が営まれていました。

アイヌに伝わる行事のひとつに、食用などのために捕獲した熊の霊を送るイヨマンテと呼ばれる行事があります。イヨマンテも川魚の供養も、共に精霊送りのための行事です。自然のなかで一生を終えた生きものはあの世に行ったのち、再び生きかえってくる。しかし、人の手によって殺された生きものは、そのままではあの世には行けず、生まれ変わることもできないと考えられてきたからです。

日本人は、先祖の霊が川を伝わって山に帰っていくこと、人と同じように魚にも魂があると信じてきました。西欧近代科学の立場からみると、このような考えはまったく非科学的で馬鹿げているともいえます。
自然は生と死を繰り返す循環の体系であり、人も動物も植物も等しく命を与えられたもの、といった考えかたは西欧にはありません。けれども、日本文化の基層を成しながら、この国の山河を守ってきたのはこうした自然観や世界観でした。


Memo

・佐波川/山口県
・撮影:1998/08
・旧版公開:1999/08/23、改訂版公開:2017/05/06


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