(74) 大阪空港原田進入灯橋(下) 千里川

 西の六甲に陽が沈む頃、空港は夕方のラッシュを迎えます。関空開港以前は、遠く海外から飛来する国際線も含めて、橋上空を数分間隔で到着機か飛び交っていました。
ジュラルミンやチタンでできた機体は、時折残照を浴びて輝き、夜のとばりとともに、進入灯橋からは離着陸する飛行機のライトが描く美しい光跡を見ることができます。

1985年8月12日午後6時4分、満席の乗客と乗員あわせて524人を乗せた1機のボーイング747SRが、この進入路灯をめざして多摩川のほとりにある空港の18番スポットを後にしました。
しかし、到着予定時刻を過ぎても、大阪空港の門限である午後9時を過ぎても、さらに搭載された燃料がつきる午後9時27分を過ぎても機影がこの橋の上空をよぎることはありませんでした。
レーダーから消えた機影の位置が特定されたのは、公式には、翌13日の早朝であったとされています。

わが国最大の航空惨事から早幾年月。忌まわしい事故の記憶を一刻も早くかき消すためにか、“JAL123”の便名は直ちに抹消され、日本航空の社員で事故のことを直接知る人も圧倒的に少なくなりました。一時、廃棄処分されようとした機の残骸や持ち主の分からない遺品は保存されることになりましたが、墜落の原因究明には不可解な部分を残したまま、既に事故調査委員会も解散しました。

茜色の残照を浴びながら、白い鶴が優美に舞い降りる姿を、この橋も橋のたもとに集う人も見届けることができませんでした。

今年も御巣鷹の夏が巡ってきました。麓を流れる神流川には、数多くの慰霊の灯籠が流されます。


Memo

・千里川・大阪府
・撮影:1993/07
・旧版公開:2001/08/10、改訂版公開:2017/08/22


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