万葉の和歌に詠まれた猪名川や猪名野

猪名川や猪名野を題材にした万葉の和歌

猪名川の万葉の歌碑河畔に設置された紀貫之の和歌の歌碑【1993年 撮影】
揮毫は『泥の河』や『蛍川』の作者として知られる宮本 輝氏

古くから猪名川流域は、風流人の多く住んだ所として知られています。
風雅を愛した人たちによって、猪名川や猪名野を題材にした和歌も多く詠まれています。

ここでは、『万葉集』『夫木和歌抄(集)』『古今和歌六帖』などの和歌集に収載された和歌のなかから、猪名川・猪名野を題材にした主な和歌を紹介します。

これらは、国文学に明るいうちの財務大臣に頼んで、30年ほど前に中之島の府立図書館で、古典関係の書物にあたって手作業で調べたものです。いまならインターネットの検索機能を使って調べると、もっと他にも見つかるかもしれません。

“しなかとり(息長鳥)”は、”ゐな”にかかる枕詞です。水鳥の”かいっぶり”を指すとされています。

なお、No.2と№12の和歌は、伊丹市文化財保存協会によって猪名川左岸堤防に歌碑が建立されています。

■猪名川・猪名野を題材にした主な和歌

●表中の配列は、上の行から|和歌|詠者|出典|備考| の順です。

(1)
  • 我妹子に 猪名野は見せつ 名次山 角の松原 いつか示さむ
  • 高市連黒人 たけちのむらじくろひと
  • 万葉集(巻3-279)
  • 8世紀中~末頃に成立
(2)
  • かくのみに ありけるものを 猪名川の おきを深めて わが思へりける
  • 詠み人しらず
  • 万葉集(巻6-3804
  • 底本『尼崎本』
(3)
  • しなが鳥 猪名野を来れば 有間山 夕霧立ちぬ 宿りはなくて
  • 詠み人しらず
  • 万葉集(巻7-1140)
(4)
  • 大き海に あらしな吹きそ しなが鳥 猪名の湊に 舟泊つるまで
  • 詠み人しらず
  • 万葉集(巻7-1189)
(5)
  • しなが鳥 猪名山とよに 行く水の 名のみ寄そりし 隠り妻はも
  • 詠み人しらず
  • 万葉集(巻11-2708)
(6)
  • 五月雨に ゐなの河きし 水こえて おささかはらや いつこなるらん
  • 藤原兼実 ふじわらのかねざね
  • 夫木和歌抄(巻24雑部6)
  • 13世紀末頃に成立、底本『静嘉堂文庫本』
(7)
  • ありま山 みねのあらしに月さえて ゐなのかはらに ちとりなくなり
  • 藤原伊嗣
  • 夫木和歌抄(巻17冬部2)
(8)
  • うらつたふ たつのもろこゑきこゆなり ゐなのみなとに しほやさすらん
  • 藤原親盛 ふじわらのちかもり
  • 夫木和歌抄(巻25雑部7)
(9)
  • ありま山 みねの松風 おとさえて ゐなのささはら うつらなくなり
  • 藤原公衡 ふじわらのきみひら
  • 夫木和歌抄(巻14秋部5)
(10)
  • あを山に かすみたなひく しなかとり ゐなのふしはら やとはなくして
  • 権僧正公朝 ごんのそうじょう きみあさ
  • 夫木和歌抄(巻22雑部4)
(11)
  • しなかとり ゐな野をゆけは ありま山 ゆきふりしきて あけぬ此よは
  • 柿本人麻呂 かきのもとのひとまろ
  • 古今和歌六帖(第二帖一22)
  • 平安前期に成立、底本『宮内庁書陵部桂宮本』
(12)
  • 千とり鳴 ゐなのかはらを みるときは やまとこととも おもほゆるかな
  • 紀貫之 きのつらゆき
  • 古今和歌六帖(第三帖一106)
(13)
  • いかはかり ふる雪なれは しなか鳥 ゐなのしは山 道まよふらん
  • 藤原国房 ふじわらのくにふさ
  • 後拾遺和歌集(第6冬)
  • 1086年に成立、底本『宮内庁書陵部39冊本』
(14)
  • ありま山 ゐなのささはら 風ふけは いてそよ人を 忘れやはする
  • 大弐三位 だいにのさんみ
  • 後拾遺和歌集(第12恋2)
(15)
  • しながどり 猪名野の原の 笹まくら 枕の霜や やどる月かげ
  • 源実朝 みなもとのさねとも
  • 金椀和歌集(524)
  • 13世紀初頭に成立

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