無料のネットサービスに潜む落とし穴

フェイスブックやツイッター、グーグル検索、GメールなどのSNSサービスやネットツールは、無料でつかえる便利なものです。しかし、サービスへの登録時(初回の利用手続きの時)に同意した利用規約に記載された事項について、あまり気にかけずに使っていると、そのうち痛い目に遭うかもしれません。

SNSやブログサービスに投稿した写真などの著作権

昨日(2020年7月22日)の新聞やニュースサイトで、ツイッターのリツイートに関連した最高裁の司法判断が大きく掲載されていた。判決文は最高裁のサイトでPDFファイルを閲覧できるので、興味のあるかたはどうぞ。

その司法判断の内容はさておき、良い機会なのでSNSと著作権に関して少し調べてみた。
すると、ツイッターやフェイスブックなど広く普及しているSNSには、予期せぬ落とし穴が仕組まれているのがわかった。

自分が創作した著作物は、著作権法や条約によって保護されており、著作権や著作者人格権などの諸権利は創作した人が保有している。
いっぽう、SNSを利用して、自ら著作権を保有する画像や動画・文章などの著作物をSNSに投稿した場合、本来ならば著作権法で保護されているはずの諸権利が形骸化され、実質的には骨抜きにされてしまうことがある。

なぜなら、SNSの「利用規約」に基づき、サービスを提供しているツイッター社なりフェイスブック社などが、ほぼ自由自在に、かつ無償でその著作物を使用したり改変したりできるという利用規約が設けられているからである。

変な利用規約である。通常、他人の著作物を利用する場合は、どの著作物かをあきらかにした上で利用目的や利用条件などを示し、それに双方が合意した上で利用許諾を得るのが普通である。
しかし、SNSの利用規約によると、具体的な著作物を示すことなく、事前に、包括的に、無条件に、サービスを提供している企業が利用できるという規約となっている。ユーザーは、SNSの利用をはじめる登録時に、この利用規約に同意しているはずである。言い方を変えると、規約に同意しないとサービスを利用できないシステムになっているはずだ。

小さな文字列で示された規約を隅々まできちんと読まなかったというユーザーも多いかもしれない。でも「同意する」をクリックして利用をはじめてしまった以上、「契約」は成立している。ちゃんと読んでないので、知らなかったという言い訳は通用しない。

こうした利用規約に基づく契約は、言ってみれば一種の「踏み絵」のうえに成立しているバーター取引の協定である。

少し乱暴に言えば、利用規約にはサービスを提供する側と利用する側との力関係や技術的に優位な立場を利用した企業の陰謀が仕組まれている。
われわれ利用者は、SNSなどのサービスを無償で利用できることと引き替えに、SNSの提供企業に対して、その企業が旨味を感じる利用者の著作物をほぼ無条件かつ無償で使用できる権利(ライセンス)を認めているということになる。

例えば、フェイスブックの利用規約には、「利用者のコンテンツをホスト、使用、配信、変更、運営、複製、公演、公開、翻訳、および派生作品を作成するための非独占的、譲渡可能、サブライセンス可能、無償、かつ、全世界を対象としたライセンスを弊社に付与する」と書かれている。
したがってフェイスブック社は、ほぼ無条件かつ自由自在に、ありとあらゆる手法を用いて、しかも対価を払わずに利用者の著作物を使うことができる。

利用規約に同意を得たことによって、フェイスブック社はユーザーが著作権を保有しているコンテンツを自由自在に使う権利を確保できている。投稿されたコンテンツをチェックして、その中にめぼしいものがあれば、著作者の預かり知らぬところで利用し、収益源とすることができるのである。しかも、創作物を都合のよい形に改変し、いかように料理しても構わないことになっている。

フェイスブック社は、すでに利用者への広告配信によって一定の収益を上げているはずである。さらに、広告収入以外でも利用者の知的財産を使って、何らかの利益を得ようとしているのではないだろうか。

ちなみに、フェイスブックの具体的な利用規約は、次のように記されている。
https://www.facebook.com/legal/terms

===【以下引用】===
具体的には、利用者が弊社の製品上で、またはこれに関連して、知的財産権の対象となっているコンテンツをシェア、投稿またはアップロードする場合、利用者は、弊社が(利用者のプライバシー設定およびアプリ設定に従って)利用者のコンテンツをホスト、使用、配信、変更、運営、複製、公演、公開、翻訳、および派生作品を作成するための非独占的、譲渡可能、サブライセンス可能、無償、かつ、全世界を対象としたライセンスを弊社に付与するものとします。例えば、利用者がFacebookで写真をシェアする場合、利用者は、弊社がその写真を(利用者の設定に従って)保存、複製し、他者(弊社サービスをサポートするサービスプロバイダー、または利用者が使用するその他のFacebook製品など)と共有することを許可したことになります。このライセンスは、利用者のコンテンツが削除されるとその時点で終了します。

利用者は、コンテンツを個別に削除することができ、またはアカウントを削除することですべてのコンテンツを一括して削除することもできます。
===【以上引用】===

引用文の最後のあたりには、「同意できないならば使うなよ!」という趣旨のことが、オブラートにくるんで書かれているように思える。

現在のような利用規約だと、著作物の使われ方如何で、場合によっては利用者にとって著しい不利益や不利な状況を招くこともあり得る。規約として明文化され、利用者が承認しているとはいえ、言い回しは難解であり、企業サイドのみが利するという大きな問題を孕んでいないだろうか?

いまは使うのを辞めてしまったが、FC2など無料のブログサービスにも同じような利用規約があったような気がする。

今回、改めてFC2ブログの利用規約を確認してみたところ、ユーザーの作成物(著作物)をFC2が無条件で使用できることとし、ユーザーはFC2の権利を承認するものと規定されている。
https://help.fc2.com/blog/tos/ja#service_blog (2.サービスの使用 の第7項)

===【以下引用】===
7.ユーザー保有の作成物
ユーザーは、本サービスを通じてアクセスできる情報及び作成される掲示板、ブログ、サイト等の空間内の全ての情報(以下「コンテンツ」といいます)上で生成されるユーザー自身の作成物について、著作権およびその他の権利を保持します。ユーザーが本サービスを通じて発生した作成物は、編集、翻訳、出版、実演、翻案、展示、プロモーション、配布その他のあらゆる事由に関する権利をFC2が無条件で利用できるものとします。この権利はFC2が本サービスの運営上の理由により必要不可欠のものであるとし、ユーザーはこれを承諾するものとします。
===【以下引用】===

規約によると、企業がユーザーの著作物を無条件に利用できる理由は、「サービスの運営上の理由により必要不可欠のものである」となっている。なんとも不可解な理由である。

話をフェイスブックに戻す。著作物は著作者の知的財産である。企業の論理で一方的に利用されたり、改変されたりして困るような著作物は、著作権法などの法律に基づいて保護され、自分の手で管理できる安全な場所に置いておくことが重要である。例えば、このサイトのような自分で対価を払って利用しているレンタルサーバーである。
無料のSNSサービスには大事な著作物は置かないこと、もし、何らかの必要が生じて画像などを投稿した場合は、情報発信の用が済んだら速やかに削除してしまうことが自衛策のひとつになるのではないかと思う。

SNSは無料なのだから、費用を負担してサービスを提供する企業(フェイスブック社)にとってなんらかの利益をもたらすことができるように偏った規約が定められるのは当然であり、サービスに見えにくい落とし穴が仕組まれていても、それは仕方がないという見方もある。

しかしながら、弱小国に不平等な通商条約の締結を強要する大国と同様に、独占的なIT技術を武器に、企業と利用者との力関係を巧みに利用して、無茶な利用規約を押しつけてくるSNS企業の姿勢やCEOの濁った眼に悪意は潜んでいないだろうか。

少なくとも、無料サービスの影で利用者のメールのパスワードを収集したり、広告主に利用者の個人情報をこそっと流す企業は安易に信用してはいけない。

Google のメールソフトはメール本文を解析している!?

ネットサービスの王者グーグル

前節には、フェイスブックを例に、無料で利用できるSNSの利用規約に潜む問題点のことを書いた。

ところで、無料のネットサービスやネットツールの代表格と言えば、グーグルが提供している検索ソフトである。

グーグルの検索ソフトが登場したのは、たしか2000年ごろだったと記憶している。それまでのgooやYahoo!など、ほかの検索ソフトを圧倒する優秀なソフトとして認知され、またたくまに今日のほぼ独占的な地位を確立した。

グーグルは、優秀な検索ソフトを無償で提供する見返りに、ユーザーの検索語句、つまり興味の対象や嗜好などを収集し、それらを分析して、その利用者に最適なネット広告を否応なしに投げかけてくる。
興味のある分野の広告が次々と登場するので、思わずクリックしそうになることもある。人間の弱みにつけ込んだ、ある意味で優れた広告システムである。開発した彼らは、僅か数年で巨額の富を手に入れた。

それを資本にして、電子地図やメールソフト、翻訳、RSSツールなど、次々に無料のネットツールを開発し、あるいは技術的に先行していた企業を傘下に収めて、インターネットの世界に不動の地位を築いたことは、ネットユーザーなら誰でも知っていることである。

そのグーグルの提供するメールソフトにGmailがある。同社が提供しているほかのサービスと同様に、もちろん無料である。
******@gmail.comというアドレスも付与してくれるし、何よりも優れた点はスパムメールのフィルター機能が秀逸である。勧められて試しに使ってみると、鬱陶しいゴミメールや迷惑メール、詐欺メールの類を一掃してくれるのがわかった。モグラ叩きのようなスパム退治から解放されるので、重宝して何年か前から自分も使っている。

グーグルの提供する無料のメールソフトやアドレスを使い始めて数年になる。
グーグルのほかに、ずっと以前から使っているプロバイダのメールアドレスも併用しており、別のメールソフト(Backy!)も20年近く使っている。これらは、ほんの僅かな額ではあるが有料のツールである。

いっぽう、グーグルのメールソフトには、ほかのメールアドレスを取り込んで、操作を一元化する機能が備わっている。
メールの送受信の度に、別のメールソフトを起動しなくてすみ、複数のアドレスを使った送受信の操作がスムーズにできる。その結果、ついついグーグルのメールソフトを使ってしまうことが多くなった。

ところが、数日前、メールの送信時にこんなことがあった。

偶然ではあるが、グーグルのメールソフトに潜むワナ?を見つけてしまったのである。

相手先に送信しようとしたメールの本文中で、本来ならば
添付ただいたファイルを」と書くべきところを、
添付だいたファイルを」とミスタイプした。

自分では、そのミスタイプに気づかずに送信ボタンをクリックしたところ、Gメールのソフトから予期せぬ警告を兼ねた問いかけを受けた。
画面には「ファイルが添付されていないが、このまま送ってもよいか?」というメッセージが表示されていた。

じつに親切でよくできたメールソフトである。
しかし、考えてみれば恐ろしいことでもある。

送信しようとしたメールに、ファイル添付されていないことがわかったのはなせか?
送信メールにファイルが添付されていなかったからである。

では、送信者がファイルを添付しようとしたのをメールソフトはなぜ知ったか?
答えは、機械的であるにせよ、メール本文の文字列をすべてスキャンし、解析あるいは解読されているからに他ならない。

この件に関して、グーグルの利用規約には、次のように記されている。
https://www.google.com/intl/en/policies/terms/archive/20131111-20140414/

===【以下引用】===
当社のサービスにおけるあなたのコンテンツ
一部のサービスでは、 アップロード、 参加する、保存、送信または受信コンテンツ。お客様は、そのコンテンツで保有する知的財産権の所有権を保持します。要するに、あなたのものはあなたのものです。(中略)
当社の自動システムはコンテンツ(電子メールを含む)を分析し、カスタマイズされた検索結果、カスタマイズされた広告、スパムおよびマルウェアの検出など、個人に関連する製品機能を提供します。この分析は、コンテンツの送信、受信、および保存時に行われます。
===【以上引用】===

日本には『タダほど高いものはない!』という諺がある。
試しにグーグルの翻訳で英文にしてみると、こうなる。
    ”Nothing is as expensive as free!”

機械翻訳とは思えない、こなれた表現である。ということは、たぶん古今東西、萬国共通の教えなのであろう。

時代を超えて受け継がれてきた古人の教えには、耳を傾けるべき価値が含まれているのに違いない。


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