必要なモノが生じたときに、いちいち新しいのを買っていると何かと高く付きます。マスクもそうですが、WEBカメラも手持ちのデジカメがあるならば、それを使って作りましょうという話です。
手持ちの古いデジイチをWEBカメラに
新型コロナ夏の陣は、このまま複数のピークを上り下りしながら、秋の陣、冬の陣へと続きそうな気配がします。
遅まきながら、コロナ対策の一環として、幻のオリンピック連休を利用してネット会議に対応したWEBカメラを準備しました。
とりあえずネット会議の準備完了
需要が急増した春の一時期ほど品薄ではないと思いますが、中国製の安いWEBカメラは画質や信頼性がイマイチです。だからといって、5Kから15Kほどする新品をわざわざ買うのはあほらしいので、明るいレンズが使える手持ちの古いデジタルカメラ(DSLR)を流用して、WEBカメラに仕立て上げることしました。
デジカメのライブビュー機能を利用してWEBカメラ化する方法はいくつかあります。高画質を求めるならば、USB接続のHDMIビデオキャプチャー・アダプターといったハードウエアを使う方法が良いそうです。その場合の機器の相場は15K~25K前後。今回は、ローコストに収めることを優先し、ソフトウエアで処理する方法を採用しました。
ソフトも純正品からフリーまでいろいろあります。
国内カメラメーカーのうち、キヤノンは比較的熱心で、デジカメをWEBカメラへ転用する純正ソフトを出しています。後追いのニコンも、2020年8月6日にWebcam Utility ベータ版をリリースしました。とは言っても、使っているうちに不具合が生じるかもしれないベータ版です。また、適合する機種は、ミラーレスのZシリーズ、D6、D850など最近の機種だけです。自分の使っているようなひと昔まえの古い機種はもちろん、密かに撤退したミラーレスのニコン1シリーズもほぼ切り捨てです。古い機種まで構っている余裕は、もうニコンにはないのでしょう。
そこで、自分のことは自分で手を打ちます。デジカメのライブビューをネット会議のPCモニターに映るようにするために、2種類のフリーソフトを利用することにしました。
(1)デジカメのライブビューをIPカメラ化するソフト
(2)IPカメラをWEBカメラに変換するソフト
前者は、いわゆるテザーソフトです。具体的なソフト名や設定方法は、OSや利用するカメラの機種によって多少異なります。詳しく解説したサイトがたくさんあるので、検索してそちらをご覧ください。
動作テストでわかった問題点
テザーソフト上で稼働時間のテスト中
2種類の変換ソフトを使う方式で古いデジイチを使ったWEBカメラの動作テストをしています。
古いですがレンズ性能は良いので画質は良好で、散らかった部屋もうまくごまかせます。ただし、何度かテスト重ねると、ひとつ大きな問題がみつかりました。
それは、稼働させて30分~40分ほど経過すると、デジカメ本体がオーバヒートとして、リセットされてしまうことです。一旦リセットされると、テザーソフト上の映像は自動的に復帰しますが、その先の会議ソフト上では仕様上、自動復帰しません。つまり映像が空白のままになってしまい、いわゆる放送事故が起きた時のような何も映っていない画面になってしまいます。
今回、流用したデジカメは2008年に発売されたもので、当時はムービーカメラの機能はついていません。したがって、WEBカメラのような長時間の使用は考慮されていないので、リセットされてしまうのは仕方がないのかもしれません。
問題はリセットが、タイマーで作動するのか?、あるいは温度センサーが働くのか?、どのような条件や仕組みで作動するのかわからないことです。
そこで、リセットの原因は発熱にあると仮定し、とりあえずの発熱対策として【強制空冷システム】をつくってテストしてみました。
材料はステンレスのバットとPCファン2つです。2気筒の空冷システムなので、『Nコロ』と命名しました。
2気筒の空冷システム『Nコロ』
カメラを『Nコロ』に載せてテストをしたところ、1時間の連続走行ができました。
稼働後1時間でリセットしたときでも、強制空冷システムが効いていて、ボディはあまり熱くなっていません。
もしかしたらリセット動作には、温度センサ以外の、別の制御システムが効いているのかもしれません。
なお、事前に調べたニコンのアナウンスによると、デジカメをWEBカメラとして利用する際、次の2点に注意せよということです。
(1)電源はACアダプターから供給する
(2)シャッターの半押しタイマーを「∞」に設定する
今回のテストでは、アナウンスにあった2点には対応済みです。
長時間稼働はどのくらいできるのか?
ここでの長時間は、数百というレべルではなく、せいぜい数時間のレベルです。
10年以上前に発売された古いデジイチを使ったWEBカメラの動作テストをしてみたところ、デジカメ本体の保護機能が働いてリセットされました。ファンで冷却しながら使っても約1時間以上の長時間稼働は難しいという問題にぶち当たりました。
ダメ元でニコンのカスタマーサービスに相談してみましたが、結果はやはりダメでした。
得られた回答や情報を自分なりにまとめると次のような感じです。
なお、以下はニコンの公式見解ではありません。
- リセットされる理由は、発熱などによる損傷を防止する保護機能が作動するため。
- 保護機能の詳細は公表できないが、SONYタイマーのような経過時間によって○年で壊れる(笑)といった単純なモノではない模様。
- 一般に古い機種はLV機能も古く、稼働時間も短くなる。ユーザーが手を加えて稼働時間を無理に延ばすことは推奨しない。
- 現行機種を使い、8月に公開予定の純正ソフトを使用して、WEBカメラとして利用した場合の連続稼働時間を尋ねたところ、現時点では把握できていないとのこと。また、今後、公表できるかどうかは不明とのこと。
- ニコンのデジカメで動画撮影をする場合、現行機種を含め、最長記録時間は29分59秒という制約がある。この記録時間の制約は、輸出時にデジカメとデジタルムービーカメラとを区別するための関税上の措置に由来していました。2019年に税制は変更されましたが、記録時間の上限はそのままで、一種の社内基準のようなものだそうです。現在のところ、延長する予定はない模様です。
以上から、現段階での結論は、次のようになりました。
- デジイチをWEBカメラとして流用する場合、自己責任で冷却をしながら使うとしても、リセットされるタイミング(テストでは最長約1時間)を稼働時間の限界と考えるべし。
- どうしても長時間の利用が必要な場合は、稼働実績のある専用のWEBカメラを導入する。
- そもそも、長い会議は疲れるし、無駄が多いので、できるだけ手短かに済ますことが大事。
動作テストからわかったこと
引き続き、古いデジイチをWEBカメラに使う動作テストをしています。
これまでに得られた知見を簡潔にまとめると、次のとおりです。
- 発熱などによる損傷を防止するために保護機能が働いてリセットされる。
- 連続稼働時間は、条件によって異なるが、『Nコロ』で強制冷却しても最大約1時間。
- 稼働時間を延ばすための改造は推奨されない。
古い機種だから致し方がないのですが、最新の機種でも発熱による問題は生じているようです。
例えば、キヤノンのミラーレスの最新鋭機を使って動画を8Kで撮影すると、発熱して20分前後で強制終了し、4Kよりも撮影可能時間が短くなるということです。原因はイメージプロセッサを酷使するので、発熱量が増大するからだと言われています。
関連するサイトを見ていると、撮影条件によるおおよその連続稼働時間もオープンにされているようです。
使っている古いデジイチには動画撮影機能はありません。WEBカメラ化には、ファインダーのライブビュー機能を使っているので、たぶん関係ないと思いますが、念のため撮影する画像サイズの設定を12Mから3Mに小さくして稼働時間が延びないかテストをしてみました。
空冷2気筒の冷却システム『Nコロ』は、これまでと同じ仕様です。
テスト結果は、やはり1時間でリセットされました。ただし、ボディの発熱は軽微です。
ニコンの窓口担当者の話しぶりからは、リセットの作動について、非公式ですが、「ソニータイマー」のような時限装置ではないという感触でした。
けれども一連のテストから得られた個人的な見解だと、『ニコン大麻~』は、シンプルなゼンマイ仕掛けの時計のような気がします。
ゼンマイ仕掛けのタイマーは、技術的には枯れていますが、計時の精度はけっこう正確です(笑)
以上の結果から、ひとむかし前の古いデジイチですが、稼働時間59分59秒までのWEBカメラとしては、なんとか使えそうです。もちろん、あくまで自己責任です。
稼働時間の確認作業の合間に、別途、購入したマイクのテストも済ませました。
動作終了を予告する表示ソフトのイメージ
目下、WEB会議開催に向けての最終の仕上げとして、大麻~と連動した残り時間の表示ソフトをつくっています。
もう少し具体的に言うと、大麻~の進み具合を察知して、残りの稼働時間を算定し、残り3分になるとWEBカメラの画面に「黄色」のロゴを点灯させ、残り30秒で「赤色」のロゴが点滅するというウルトラ・ライトなものです。
この表示ソフトが完成すると、会議の途中で映像が切れても、参加者のみなさんも納得してくれるかもしれません(笑)
【2020/08/07 追記】
当然ですが、『Nコロ』を導入する際は自己責任です。爆発や発火、機材の損傷等いかなる事態が生じても、takaginotamagoは一切責任を負いません。
発熱に伴うリセットや動作停止に関しては、2020年8月6日にニコンからリリースされたWebcam Utility ベータ版の取説にも次のような注意事項が記されています。(注意事項の一部を抜粋)
- カメラを長時間使用すると、カメラが高温になりライブビューが使用できないことがあります。 温度が下がるまでお待ちください。
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