「屋上屋を架す」という諺は無用のことをするたとえでありまする。これをなぞって「橋下に橋を架す」という諺をつくるならば、それは川辺で暮らす人にとって、まんざら意味のないことではありません。
上の橋は、もちろん渡るための橋。
いっぽう下の橋は、ロープが結わいつけられていることからも明らかなように流れ橋(板橋)です。撮影した時には雨が降っていて、水位が少しあがる様相をみせていたので、川岸に引き上げられていました。
普段、下の橋は、河岸と上の橋の橋脚横に置かれたブロックとの間に橋板をわたして、野菜などを洗う場所として使うのでしょう。橋板にはちゃんと滑り止めもつけられています。
川岸に設けられた洗い場のことを「使い川」と呼んだりしますが、この下の橋はさしずめ『使い橋』とでも呼べばよいのでしょうか? それとも『使い橋り』?
呼び名はいずれにせよ、普段のおだやかな表情と、大水の時の猛々しい表情との二面性をもっている日本の川を感じさせるふたつの橋です。
Memo
・豊岡川/岡山県
・撮影:1998/07
・旧版公開:1999/05/03、改訂版公開:2017/04/14
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