流れ橋(板橋)というのは、だいだい人ひとりが渡れるぐらいの幅しかない狭いものが普通です。しかし、なかにはクルマで渡れるようにぐ~んと幅を広くしたワイドな流れ橋もございます。
そのひとつが、岡山県の南西部を流れる小田川に架けられた向山(むこうやま)橋です。架橋地点の川幅は80メートルほどあり、両岸の土手を流れ橋だけでつなぐと、かなり大規模な橋が必要です。流された時の復旧作業も大掛かりとなってしまうため、流れ橋と河床道路を半々に組み合わせて川を渡るように工夫されています。大水がでたあとの復旧時に、できるだけ手間がかからなくしておくのは大切なことです。
普段水が流れている左岸側の約半分は、鳥居形の橋脚を6本立てた7径間の流れ橋です。残りの右岸寄りは河原の上にコンクリートを盛りつけて高さ約1メートルほどの河床道路をつくった一種の潜り橋となっています。
流れ橋の区間の全長は約30メートル、幅は2・5メートルぐらいです。幅の広い板を横方向に4列に敷き並べてクルマが通れる幅が確保されています。 もちろん、橋の上でクルマ同士がすれ違うことはできませんが、流れ橋を渡りきった河床道路のところに待避所が設けられていて、対向車が来たときはそこで待つことになっています。
この橋を利用しているのは、小田川の右岸にある向山集落で生活する10数戸の人々とその関係者の方々ですので、先を争っての橋上での喧嘩なんて話は、まずあり得ないことでしょう。
向山集落に暮らす人々にとっての生命線でもあるこの向山橋、橋板の数が多く維持管理や復旧に手間がかかること、重量のある大型車が通れないことなどから、1999年現在、この橋のすぐ上流にコンクリート製の永久橋の建設が進められています。クルマで渡れる稀有な流れ橋もまもなく姿を消すものと思われます。渡ってみようと思われるモノ好きな方は、どうぞお急ぎください。
Memo
・岡山県・小田川
・撮影:1998/07
・旧版公開:1999/06/23、改訂版公開:2017/04/26
・その後、新しい向山橋が完成し、クルマで渡れるこの流れ橋は撤去されました。

クルマで渡れる流れ橋は、この向山橋のほかに、もうひとつあって、由良川の中流に架かっていました。但し、その橋を渡れるクルマは、地元の農耕用の軽トラに限定されていました。しかし、その橋も21世紀に入ってまもなくコンクリートの永久橋に架け替えられ、現存していません。
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