(34) 魚野川のハナカマス 魚野川

上越国境の山々の北面に降った雨や雪は、魚野川の流れとなって魚沼地方を駆けくだり、越後川口のまちで信濃川に合流します。
六日町を流れる魚野川のほとりに、一艘の川舟が係留されていました。この地方でハナカマスと呼ばれる木の小舟で、サケ漁などに今でも使われています。

ハナカマスは、大木をくりぬいてつくった丸木舟から発展したものといわれており、ヘサキからトモにかけて舟全体がスラリとした格好をしています。少し遠くから見たときに、舟の前後を見分けにくいのがハナカマスの特徴です。

舟の底板には、4~5枚の細長い杉板が使われており、チキリと呼ばれるリボンの形をした木のカスガイを打ちこんで、隣合った板を接合しています。舟底が一枚板でないのは、浅瀬に乗り上げても割れにくくするためです。舟をつくる時には手間が掛かりますが、急流で知られる魚野川の流れを知りぬいた舟大工さんの知恵です。

山師は木を植えて水源の山々をまもり、舟大工は山の恵みと巧みの技で川舟をつくる。漁師はその舟を操って川の恵みを授かる。
社会全体が輸入材とプラスチック製品に寄りかかって、後継者の育成を怠ったがために、この素晴らしい山と川との循環の仕組みを来るべき世紀に継承できないのは、とても残念なことです。


Memo

・魚野川・新潟県
・撮影:1998/07
・旧版公開:1999/10/23、改訂版公開:2017/06/22


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