(35) 銭取り橋 大井川

河岸の台地に茶畑が広がる大井川の下流には、日本一長い木の橋が架かっています。

その名は蓬莱橋。全長は、なんと897メートルもあり、歩行者のほか自転車やバイクでもわたれます。初代の橋が架けられたのは1879年(明治12年)。その後、大井川の増水のたびに被害を受けてきたので、1965年(昭和40年)に橋脚の部分がコンクリートでつくりかえられましたが、木橋特有の素朴なイメージは今でもよく保たれています。

江戸時代、「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」と歌われた大井川ですが、この蓬莱橋は街道筋に架けられた橋ではありません。明治になってリストラされた武士階級を救済するために、牧之原台地を開墾して茶畑がつくられ、それと前後して、左岸にある島田の町から大井川を隔てた台地の茶畑に行くときの便宜を図るために架けられたそうです。

橋の建設費を開墾関係者が出資したことから、関係者以外の人がこの橋をわたる場合、橋の通行料を徴収することが定められました。その慣習は、橋とともに100年以上にわたって継承されてきました。

橋の上から上流を眺めると、南アルプスの山々へと連なる雄大な景色が広がっています。大井川の上流域は、日本有数の多雨地帯であり、良質の木材を産する林業地域です。

かつて、上流の山々から切りだされた原木は、大井川の流れを利用して下流に運ばれ、この島田で陸揚げされて材木や木製品、パルプなどに加工されました。島田は木で栄えたまちで、古くから製材業が発達しました。こうした流域やまちの風土と歴史が、この長い木橋を生んだこととも関係しているのでしょう。

蓬莱橋は、少し前までは隠れた名所でしたが、1997年に「木造歩道橋として世界一の長さ」とギネスブックに認定されてからは、一躍全国に知られる観光スポットとなったようです。

島田側の橋詰には、橋守の小屋があります。そこで往復大人20円、子ども10円を払えば、わたることができます。なお、橋の利用は午前7時から午後6時までの時間に限られ、夜間は通行止だそうです。

おっと、ワン公の通行料は幾らか聞きそびれましたが、多分、1円じゃないかと・・・、ワン!


Memo

・大井川・静岡県
・撮影:1996/11、1997/10
・旧版公開:1999/11/01、改訂版公開:2017/06/23


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