(42) 堰のある風景 新河岸川

川越市の市街地を流れる新河岸川には、田谷堰という取水堰があります。最近、いろいろと話題になっている可動堰の一種で、4つのゲートを支える柱は手前にみえる橋と一体構造になっています。銘文によれば昭和13年にできたもので、新河岸川の上流にあたる赤間川の付け替えに際してつくられたようです。

川の大きさに比べて少し大げさな堰のようにも思えます。しかし、川越台地の湧水を水源とする新河岸川の流れは必ずしも豊かではなく、農業に必要な用水を貯めるには、川を塞いでしまうようなこの大きさの堰が必要だったのだと思われます。
この田谷堰のある風景は、川岸にそびえる5本のポプラとともに「川越景観百選」のひとつに選ばれており、地域のシンボルとして市民にも親しまれているそうです。

長良川河口堰の一件以来、どうも堰の肩身が狭いようです。川をすみかとする生きものにとっては、堰などないにこしたことがありませんが、人々が川の水をうまく利用しながら暮らしていくためには、欠くべかざる施設でもあります。
さりとて、堰の建設を無条件に擁護するつもりはなく、また、無闇に反対する立場でもありません。ただ、ジャーナリズムが垂れ流す「堰=悪者」という呪文を盲信するのではなく、必然性のある施設は時の流れが正しく評価し、地域の人々に親しまれるものである、ということを物言わぬ堰に成り代わってひと言申し上げたく候。


Memo

・新河岸川/埼玉県
・撮影:1997/02
・旧版公開:2000/01/23、改訂版公開:2017/09/12


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