4月の声をきいても、雪解け水を集めて流れる犀川の水辺には、まだ冬の気配が漂っています。胴長を身にまとい、雪しろで増水した流れに入っているのは、加賀友禅の染工場のこだわりの職人さんでしょうか。
友禅染は、粉にしたもち米を糊につかい、輪郭をくっきりと染め抜くために編みだされた技法。その最後の工程が、生地を流れに晒し、不要になった糊や染料を洗い落とす「水洗い」、つまり「友禅流し」です。
この水洗いの如何によって、染色の出来不出来が左右されるともいわれます。加賀友禅が成立し発展した背景には、犀川や浅野川の良質な水に恵まれていたということがあげられます。
最近では、地下水などを利用した人工のプールで水洗いが行われるようになったことから、犀川や浅野川で友禅流しの光景を目にする機会も少なくなりました。伝統産業としての加賀友禅をPRするために友禅流しの実演も行われているようですが、この友禅流しは、昔ながらの生業としてのもの。
流れの色にとけこんだ生地は、きらびやかさこそありませんが、藍は、臙脂・黄土・草・古代紫と並ぶ加賀五彩のひとつ。両白山地から流れでた雪解け水は、加賀友禅と金沢のまちに自然の息吹きを与え続けます。
Memo
・犀川/石川県
・撮影:1996/04
・旧版公開:2000/04/06、改訂版公開:2017/09/07
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