(52)抜けられます 鮎喰川

堤防に設けられた切り通しの通路を颯爽と抜けていく赤いクルマ。一見、どこにでもあるような光景に思われますが、じつは、ちょっと珍しいシーンです。

堤防というのは、川の水位があがったとき水が溢れ出すのを防ぐために、高さや幅などが決められており、ふつうは連続した一本の長い土手になっています。堤防のなかには、「霞堤」のように途中でとぎれたものもありますが、土手にこのような切り欠けがあると、洪水のときこの凹部が進入路になって、町中が水浸しになってしまいます。

しかし世の中には例外があって、あえて切り欠けを設けた堤防も存在します。
この切り欠けは「陸閘(りっこう)」と呼ばれる施設で、通行の便宜を図るための切り通しです。川を横断する交通路が潜り橋などにつながっている場合、堤防と交差する部分の路面の高さを一定の範囲内で切り下げ、川のなかにスムーズに入っていけるようにしています。この陸閘の先には潜り橋が架けられています。

ただし、堤防に切り欠きを残したままでは大水のときに問題が生じます。陸閘にはちゃんとゲートのような締め切る仕掛けが備わっていて、川から市街地へ洪水が進入するのを防ぐ仕組みになっています。
この陸閘の場合は、「角おとし」という仕組みのゲートです。赤いクルマのボンネットの向こう側に縦の溝が見えますが、大水のときは両側の溝に角材や遮水板をはめ込み、何枚か積み上げて堰のようなものをつくります。

普段、クルマや人は抜けられますが、大雨が降ったときはクルマも人も洪水も止まれ! ということになります。


Memo

・徳島県・鮎喰川
・撮影:2000/04
・旧版公開:2000/06/19、改訂版公開:2017/08/31


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