(78) 只今 訓練中(その11)エディーとスローバッグ

 7月に開始した訓練も2ケ月が経過しました。佐波川で川での泳ぎかたの基礎を一応マスターした熊次郎の訓練も、より実戦的な内容にステップアップしていきます。

という訳で、やってきたのは、県の西北部を流れる粟野川の中流です。
この川はこれまでの佐波川ほど広くはありませんが、山あいを流れるため流れは急です。しかも、今回から確保用のロープはなしです。

佐波川と同じ調子で川に入ると速い流れに押されて、あれよあれよという間に下流へと流されてしまいます。
でも最初は、まず流される練習から。あわてず、騒がず、落ち着いて流されることが肝心です。

何回か流されているうちに、川の流れは、真ん中が速く両端がゆるやかになり、場所によって流れに緩急の変化があることを知ることができます。
また、河岸の岩場など凸部の下流側には、「エディー(eddy)」と呼ばれる流れの緩やかな箇所が形成されます。もし流された時は、流れに逆らって無理に泳いだりしないで、流されながら近くのエディーをみつけて入り込み、そこから岸に這い上がれば良いわけです。

しかし、流れの中心部とエディの間には、流速差によって生じる目に見えない壁(エディーライン)があるので、エディーまで自力で泳げないときもあります。そんな場合は、岸から救助の手をさしのべてやることも必要です。

流れていく熊次郎に向かって投げられたのは、「スローバッグ」という新兵器です。ラフィティングやカヌーをやる人たちなどが使う救助用のロープです。小さな巾着袋のなかに長さ20メートルほどの水に浮くロープが収納されています。

目の前に投げられたものには、とりあえず噛みつくというのは、ワン公の本能でもあります。なので熊次郎もなんの躊躇もなく、飛んできたスローバッグをくわえます。あとは岸からロープを手繰ってエディーや流れの緩い箇所の岸辺に引っ張ってやれば、流れから脱出することができる訳です。

そんな訓練を10回ばかり繰り返し、泳ぎ疲れてヘトヘトになった熊次郎は、河原の石の上で甲羅干しをしておりました。


Memo

・粟野川/山口県
・撮影:2001/09
・旧版公開:2002/04/01、改訂版公開:2017/10/29


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