(81)『北上川』写真家 薗部澄が伝えたかったこと

薗部 澄『北上川』平凡社 1958

『北上川』と題された写真集をようやく手に入れました。
1958(昭和33)年に刊行されたこの本は、半世紀以上にわたって日本の風景とそこに暮らす人々のあるがままの姿を撮り続けた写真家 薗部 澄(そのべ・きよし、1921-1996)の最初の写真集です。

薗部さんは、岩波写真文庫の『隅田川』や新風土記シリーズの撮影に従事された方として知られています。敗戦後10年を経て変貌しつつある日本を1県1冊で紹介した新風土記シリーズに携わるうち、風土と暮らしのかかわりが語りかけるものに、もっと耳を傾けたいとの思いから、不況の時代に職を辞してまで北上川流域へと眼を向けられたようです。

 生活のメドも立たぬのにフリーになってまで撮りたかった北上川を撮る。自然条件がきびしい分だけ、より多くの人々の暮らしに緊張感があるようで、東北地方にのめり込んでいった気持ちが選んだ最初のテーマであった。
 1年後、北上川は昭和33年の第1回個展、最初の写真集となった。

(写真集『ふるさと』1990 より)

撮影:薗部 澄

『北上川』には40点の写真が掲載されています。岩手の山深い源流からはじまり、高原の開拓地を経て盛岡や北上などのまちやむらを流れ、さらに河口に至る川沿いの土地土地での暮らしぶりを記録したものです。撮影の足につかった自転車を数台乗り潰したとのエピソードが伝わっているほどです。
著作権がありますので個々のカットを紹介することはできませんが、一点だけ引用させてもらったのが上のカット。

河岸を守る木の杭のところで魚つりをする2人の子ども。でも釣り竿は、まだ幼い弟か妹をおぶった少年のもつ1本だけです。

当時撮影された写真の一部は、『水の記憶』(1995、淡交社)など近年刊行された写真集に再録されています。興味のある方はソチラをご覧ください。


Memo

・岩手県・北上川
・旧版公開:2002/04/25、改訂版公開:2017/08/27


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