6月某日未明、錦川中流域の雲霞山(くもがやま)の山頂付近から出火。
地元の消防組合から消防車27台と消防団員約260名が出動し、麓から急峻な斜面にホースを伸ばし、懸命な消火活動が続けられました。しかし、現場は水の得にくい山頂付近です。地上からの消火活動は困難をきわめ、ヘリコプターによる空からの消火に託されました。
現場から約80㎞離れた山口宇部空港から県の防災ヘリコプター“きらら”が出動。さらに広域相互応援協定に基づいて広島市消防局の消防ヘリ“ひろしま”と、瀬戸内海を越えてはるばる香川県から応援に駆けつけた“オリーブ”の3機による空中消火が行われました。
消火に使われる水は、麓を流れる錦川の流れ。
3機のヘリが交互に川に飛来して給水作業を行ないます。水面上数メートルの超低空でホバリングしながら機体の姿勢を細かく制御し、機体の下にワイヤーロープで吊り下げられた折り畳み式の消火バケットに水をくみ上げ、一気に山頂近くの現場へと向かって高度をあげていきます。
数時間にわたって、給水しては上空から放水する消火活動が何十回も繰り返されました。消火活動が長引き、途中で燃料が足りなくなったので、川の近くにある学校のグラウンドに臨時のヘリポートが設けられ、ヘリコプターに航空燃料を給油したそうです。水と油を間違えるとたいへんなことになります。
日が傾く頃、山を源とする川の流れによって山林火災は無事鎮火し、戦場のような一日が終りました。
山在りて川あり、川在りて山あり といったところでしょうか。次は、大雨が降ったときに、山が川に恩返しをしてくれるでしょう。
Memo
・錦川/山口県
・撮影:2002/06、旧版公開:2006/04/20、改訂版公開:2017/02/23
ヘリコプターの呼び名は、自治体や所属機関によって防災ヘリ、消防ヘリなどに分かれます。ヘリによる実際の消火活動を見たのはこのときがはじめてでした。
その後、災害時におけるヘリコプターの活躍は、大震災や鬼怒川水害の時にテレビなどで実況中継され、よく知られるようになりました。
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