小さな川と両岸の道路を三連のアーチでまたぐ煉瓦造りの鉄道橋。地元では『みつあんきょ』と呼ばれています。
この橋がつくられたのは、明治28年(1895年)のこと。筑豊炭田で採掘された石炭を最寄りの港まで輸送する鉄道網を拡充するために豊州鉄道が設立され、油須原駅近くの築堤区間にこの内田三連橋梁が架けられました。
現在は、平成筑豊鉄道のレールバスが1~2時間に1本程度走るのどかなローカル線です。しかしかつては、石炭や石灰石を積んだ長い貨物列車がこの橋の上を行き交っていました。
つくられてからもう1世紀以上になりますが、大きな痛みは見受けられません。明治の匠の技が、ほぼそのままの形で残されています。
下流側の壁面の煉瓦は、小口積みと長手積みを1段ずつ交互に繰り返すイギリス積みで積まれています。いっぽう、アーチ部分は、4層の煉瓦を交互に凹凸をつけて積むことで市松模様になっています。
凝った積み方は単なる装飾のようにも思えますが、じつはこの積み方には訳があります。
将来、石炭の輸送量が増えて複線化が必要になった時、凸凹を利用して煉瓦を継ぎ足して、複線幅のアーチ橋に改造できるよう工夫が込められています。
石炭の時代は昭和の半ばで終焉を迎え、線路は単線のままで今日に至っています。複線化のための工夫は日の目を見ませんでしたが、この『みつあんきょ』は、用・強・美を兼ね備え、しかも将来の拡張性をも考慮した貴重な土木遺産です。
Memo
・御祓川の支流/福岡県
・撮影:2006/01、旧版公開:2006/06、改訂版公開:2017/02
・内田三連橋梁(通称:みつあんきょ)
・文化庁 登録有形文化財 第40-0011号
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