南千里駅前の機械式地下駐輪場

南千里駅前にできていた新しい駐輪場

数年前の夏、ちょいと訳があって大阪の実家でしばらく過ごすことになりました。帰省するときに、MTBをばらして輪行袋に詰め、新幹線に積んで実家に持ち帰りました。実家に自転車を持ち帰ったのは、数年まえに母親が運転免許を返上してクルマを処分したため、買い物などに行くときの足がなくなったからです。

北摂は東西方向の公共交通機関の便が悪く、買い物で荷物があるときなどは、クルマがないとなにかと不便です。ですが、傘寿をとおに過ぎた年寄りにクルマを運転されるのも心配の種です。
本人は「若いときからずっと乗っていて、50年以上ず~と無事故やから大丈夫!」と申します。確かに母は、危なっかしいクルマとして「1姫、2虎、3ダンプ」と言われた昔から、どこに行くにも自分でマイカーを運転して出かけていました。運転が好きなので、車は昔からマニュアルミッションです。しかし、ペダルの踏み間違いの起きにくいマニュアルミッション車だといっても、もし何かあったときには、他人さまご迷惑がかかります。

そんなわけで車の代わりに持ち帰ったMTBに乗って、南千里の駅前のスーパーに買い物にいったところ、駅前再開発にあわせて駐輪場も一新されていました。駅前の一等地には、セットした自転車を自動搬送する機械式の地下駐輪場ができていました。大阪生まれの田舎者にとっては、これまで見たこともない都会ならでは最新設備です。

機械式自転車駐輪場の入口機械式駐輪場の出入口ゲート

一般的には「機械式駐輪場」と呼ばれ、地上に設置された出入口のゲートに自転車を置くと、専用の搬送機で地下に収納する新しいタイプの駐輪施設です。土地に余裕のない東京では、かなり以前から設置されていて、何社かがこの分野に参入しているようです。

南千里駅前に設置されたのは、このメーカーの製品で「エコサイクル」という商品です。 https://www.giken.com/ja/products/developments/eco_cycle/

メーカーのサイトによると、2010年に公共の地下機械式駐輪場としては、関西で初めて南千里駅前に2基設置されたとあります。2012年に3基増設され、現在、南千里駅前には全部で5基が稼働しており、あわせて約1,000台の自転車を収容できるそうです。近畿では、その後、京都駅前や京都市役所前広場などにも同じ施設が設置されています。

京都市役所前広場の地下式駐輪場京都市役所前広場に設置された地下式駐輪場
同じメーカーの施設ですが古都にふさわしいよう色使いも古色蒼然ふうに

この地下式駐輪場の場合、自転車の収納スペースは地下に設けられているので、人は立ち入れません。ですので、車体の盗難はもちろんのこと、パーツを盗られたり、悪戯をされたりする可能性もきわめて低くなります。1台数十万円以上するメルセデスやマセラティの高級車自転車(笑)を安心して駐輪することができます。

駐輪場の車検に落ちた!

さっそく機械式駐輪場を利用してみようと思い係の人に話を伺うと、いろいろ手続きが必要で、【登録】して【車検】を受けないといけないと言われました。
「なんかクルマみたいやな」と思いつつ、書類に必要事項を記入して登録し、そのあと自転車を車検場に持ち込んで車検を受けました。

搬送機内の輸送経路や収納スペースの寸法が決まっているので、全長、ホイールベース、ハンドル幅、カゴの大きさや設置位置、タイヤの外径、太さなどに細かい規程があります。それらを車検で調べて、規定値をすべてクリアして合格しないと預かってくれないとのことです。

駐輪場の車検の様子駐輪場を利用するための車検の様子

まずは、自転車を車検用のケージに載せて各部のサイズを計測します。
車体の寸法はすべてOK、カゴにかわるバッグは脱着式なので問題なく、簡単に通るかなと思っていました。しかし、フロントタイヤの太さが規定値よりも大きく、利用条件にひっかり車検に落ちました。

係の人「お客さん、コレちょっと太りすぎですわ」

利用規則で定められたタイヤの太さは、最大幅55ミリです。それに対して、履いているタイヤは直径2.1インチの製品です。スペック上は2.1インチ(25.4ミリ×2.1=53.3ミリ)なので問題ないと思っていたら、タイヤのノブ(滑り止めの突起)の部分が検査用のケージにわずかに接触するとのことです。
実際には、移動用の金属製の溝にタイヤが軽く接触しつつも動くはずですが、判定にあいまいさやグレーゾーンはなく、白か黒だけです。

ちなみにリアに履いている幅1.95インチの別の種類のタイヤなら、定められた寸法内に収まり、問題はないとの所見です。

「まぁええやん」という大阪独特の文化を一切認めない厳格な規則です。それには訳があるそうです。
もし、搬送経路内で接触等が原因でトラブルってしまうと、メーカーからメンテの係員が駆けつけるまでの間、収容されている約200台の入出庫がすべて停まってしまうためとのことです。
導入された初期にはそういった類のトラブルが、何ヶ月かに1回ぐらいあったそうです。

そのような訳で車検に落ちたおっさんは、「車検に落ちた 大阪ええやん !!!」とSMSに投稿し、ネット通販でもう少し細いタイヤを購入して出直すことになりました。

リベンジして車検とおりました

一週間ほど前に南千里駅前にある機械式の駐輪場を利用するために車検を受けましたが、フロントのタイヤが規定値よりもわずかに太く、車検に落されてしまいました。

そこで600kmばかり離れた自宅に少し細いタイヤを取りに戻り、タイヤを交換して、再度、車検に臨みました。

太さ2.1インチから1.95インチのタイヤに交換

何度も落ちるわけにはいかないので、事前に【特製のケージ】をこさえて、事前に自主検査をしてから再車検に臨みました。タイヤの太さを左右する空気圧も入念にチェックしました。

タイヤ太さを車検前に確認車検前に特製ゲージでタイヤの太さを確認

タイヤを履き替えて再車検を受けている様子

結果は、もちろん合格!です。
係の人にICチップをフロントフォークにつけてもらい、さっそく入庫してみました。
都会の人にとってはあたりまえの施設かもしれませんが、田舎モンにとっては初めて目にするハイテク満載の最新設備です。

車検に合格したので晴れて地下式駐輪場の利用者に

これで駐輪中にパーツをとられたり、いたずらされたりする可能性もほとんどなくなりました。1回100円の駐輪場利用料金を払うだけで、つまらぬ心配から解放されました。

搬送中の様子は、サンケイニュースがYouYubeに公開しているこの動画で見ることができます。 https://www.youtube.com/watch?v=uM0i12wdmHU

その後も帰省した折には、この駐輪施設をときどき利用しています。

地下空間を利用した機械式駐輪場は、防犯面でも優れており安心して利用できます。なぜなら、普通の駐輪場は立ち入り自由なので、個々の自転車を常時監視しないかぎり放置状態となってしまうからです。駅前にありがちな放置自転車による歩行空間の障害物も一掃され、雑然とした雰囲気や見苦しい景観も改善されます。

南千里駅は、1963年に千里ニュータウンに最初にできた鉄道駅です。開業当時の駅名は新千里山駅と呼ばれていました。1964年だったか1965年だったか、豊中から同級生と自転車に乗って千里山まで名神高速道路を見にいった途中、開業してもない新千里山駅に立ち寄ったことがあります。

駅ができて半世紀以上が経過しました。未来都市を標榜した千里ニュータウンにとって、なかなか優れた駅前の駐輪場システムだと思います。

素晴らしい駐輪場システムですが、駐輪場の係の人の話によると、建設費用が一般的な駐輪場に比べて数倍高くつくそうです。それがネックとなって、駅前の公営の駐輪施設としてはなかなか普及しないとのことです。
都市環境の面でも、利用者にとってもメリットの多いこういうシステムにこそ、国が建設費用の一部を負担して普及を支援すべきだと思います。外国に多額のカネをばらまいたり、「桜を見る会」とやらに多額の予算をつかうのが国の仕事ではありません。

また、放置自転車とけばけばしい屋外広告で世界でも有数の見苦しいまちになり下がりつつある大阪にとって、いま必要なことは大阪都構想の実現をめざすことではなく、市民の足でもある自転車を活かした交通体系の再整備、景観に悪影響を及ぼさない形式の駐輪施設の充実、チャリ泥棒の撲滅、それに度を過ぎた屋外広告の規制だと思います。


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