郷土愛から他人の長編コンテンツを丸ごと盗った九州男児

オリジナルのコンテンツにはコストと手間がかかっている

takaginotamagoがウェブサイトを設けて、インターネットでオリジナルな情報の発信をはじめたのは、1998年11月のことでした。
サイト開設のきっかけは、1998年10月にEPSONのフラットヘッド・スキャナーを購入したことで、写真(プリント)のデジタル化ができるようになったことがサイト開設を大きく後押ししていたと思います。デジタル画像を使えることで、表現の幅が大きく広がるからです。

サイト運営の備忘録をみると、1998年11月末に、ISP Dionのサービスを利用して、『暮らしのある川風景』というサイトを設け、次の3本のコンテンツでテスト運用をはじめています。

  • 「蔵屋敷が並ぶ川」佐用川・兵庫県
  • 「河内の屋根つき橋」麓川・愛媛県
  • 「水神さまのいる川辺」筑後川・福岡県

水神さまのいる川辺#01この事案で盗用された「水神さまのいる川辺」のオリジナル(p.1-2)

当時、仕事がらみの調査や自主研究のために撮っていた写真は、まだフィルムカメラでした。印刷原稿として使うこともありましたので、ポジフィルムを使って、将来のアーカイブ制作をも念頭にいれながら、必要と思われるシーンを撮影していました。

ランニングコストのあまりかからないデジタルカメラと異なり、フィルムと現像代は、けっこう大きな負担でした。ポジフィルムは135-36の20本入りのプロパックが1箱15,000円前後、R現が1本あたり750円前後でした。R現込みのパック商品だと少し安くなり、1箱25,000円ほどでした。月に40~50本撮ると、大阪のラボへの毎月の支払いが5万円を超えることもごく普通にありました。

川ばかりを被写体にして撮っていましたので、川の撮影にはある程度、慣れていました。しかし、ポジですから歩留まりは良いとは言えません。水面反射があったり、日照条件の悪い朝夕や暗いシーンなどでは尚更のことです。何本か撮って、使えるカットの原価を考えると結構な数字になります。

オリジナルなコンテンツの制作には、写真材料費のほかにも、取材や調査のための資料費や交通費などのコスト、読んでいただくに値する記事としてまとめあげるためにそれなりの時間と手間がかかるのは当然のことです。

この事案で盗用された「水神さまのいる川辺」のオリジナル(p.3-4)

この事案で盗用された「水神さまのいる川辺」のオリジナル(p.5-6)

この事案で盗用された「水神さまのいる川辺」のオリジナル(p.7-8)

記念すべき第1回被盗用作品

ウェブサイトを設けて情報発信をはじめるまでは、ネット上にはコンテンツを盗む悪党が潜んでいることに、まったく気づきませんでした。

盗人の存在にはじめて気がついたのは、自分が著作権侵害の被害に遭ってからです。それは、情報発信をはじめてから2年半ほどが経過した2002年6月のことでした。

当時のサイトで公開していた盗用発見の経緯と著作権侵害行為の概要を再掲します。

■コンテンツ不正盗用事件発生!

2002年6月29日朝、当ウェブサイトのコンテンツに関して思いもかけない事態が発生しました。
概要を記すと、次のとおりです。

●発見のきっかけ
優秀な検索ロボット“Google ”で「筑後川」「水神」をキワードに検索していたところ、当サイトで公開している「水神さまのいる水辺」とまったく同じ文章内容・写真・デザインのサイトがあることを発見しました。

盗用行為でつくられたつくし会のページ

盗用されURLが書き換えられたページ丸ごと盗用され別のURLで公開されていたコンテンツ【2002/06/29閲覧】
テキスト・タイトルロゴ・画像・デザインのすべてをオリジナルから盗用し
URLが示すとおりT会のコンテンツとして某企業のサイトで公開されていた
完全な複製品であるが著作者の許諾や著作者名の表示は一切ない

上の画像でURLが示されている某企業のサイトのなかに、東京在住の福岡県筑紫地方出身者でつくる「T会」なる任意団体のウェブページが併設されていました。T会のトップページの中段には、「筑後川」と記されたページへのハイパーリンクが設けられていました。

リンク先の「筑後川」のページの内容は、当サイト『暮らしのある川の風景』の「水神さまのいる川辺」の全8ページをそっくりそのままでした。無断で複製し、T会のページやコンテンツが置かれている某企業サイトのドメイン名で公開したものでした。テキストだけで約1万字以上、写真や図版の画像は30点ちかくにのぼります。長編のひとつのコンテンツを丸ごとぱくるという、この大胆不敵な盗用は、犯行から20年経ったいまでも破られていません。

盗用行為でつくられたページ盗用行為でつくられたページの情報(URLと公開日) 【2002/06/29閲覧】
URLは【某企業/T会/kawa8にリネームされたコンテンツ】となっている
無断で複製したコンテンツの公開日は2000年6月6日

盗用被害に遭ったオリジナルのページ盗用行為でつくられたkawa8に対するオリジナルのページ
http:/www.d1.dion.ne.jp/~sentaka/tikugo17.html(現在は閉鎖し当サイトに移転)

盗用によってつくられたページのプロパティによると、当該ページが公開されたのは2000年6月6日ということです。オリジナル・コンテンツを公開してから1年半前後経ったころに盗用されていたのがわかります。
ちょうどそのころは、検索ロボットの精度が向上した時期でもありますので、盗用者は検索を重ねて、盗用するターゲットのコンテンツを見定めたのでしょう。
検索して適当なものを見つけて、手っ取り早く盗む。経験的に言えば、これは盗用者に共通する行動パターンです。また、なぜかはわかりませんが、Yahoo!の検索を使っている盗人が多いようです。

しかし、盗用したコンテンツをそのまま複製して自分のサイトやブログなどで公開すると、オリジナルも盗用分も検索にヒットすることになって、悪事はすぐにばれてしまいます。たぶん、そのあたりのことには頭がまわらないのでしょう。

この事案の盗用の手口はいたって単純で、ソースコードと画像・ロゴのファイルを丸ごとごっそり盗んで、自分のサイトにアップするという乱暴なやり方です。
ご丁寧にもオリジナルのUTLを消して、「T会」のアドレスに書き換えることは忘れないという、じつに悪質きわまりない盗用行為です。

2000年ごろ、MSからリリースされていたウェブサイト制作ソフトで「Front Page」というのがありました。古い話なのでうろ覚えですが、それを使えばネット上の他人のサイトを一括して自分のPCに取り込むことが簡単にできたと記憶しています。さすがMSです。

T会の規約が記載されたサイト内のページT会の設立趣旨が記された某企業サイト内のページ 【2002/06/29閲覧】
ドメインは盗用行為でつくられた上記コンテンツのページと共通

つまり、T会のページと同じサイトに置かれた「筑後川」の各ページには、オリジナルとまったく同じ内容の文と写真が同じレイアウトで表示されます。しかも、そのURLはT会のページが設置されている都内の某企業の公式サイトのURLが表示されるという摩訶不思議なことになっていました。ドメインの文字列には「CM」の文字があるので広告関係の企業のようです。

●盗人の言い分
そこで、T会の事務局が置かれている都内の広告関係の某企業に電話連絡をとりました。
ウェブサイト制作の責任者であり、T会のコンテンツが掲載されている某企業の経営者でもあるK氏に電話連絡を入れました。氏は筑後の出身だそうです。
著作権を侵害した盗用行為について強く抗議したところ、「T会のサイトの管理を任せている部下には、“リンクを”と指示していたのに、おかしいな。」「でも、削除すればいいんでしょ」といった程度の認識でした。
いいも、悪いも、当然、即刻削除してもらわないといけない話です。

ネット上のコンテンツを盗用するケースには、利用形態から大きく分けて2つのパターンがあります。ひとつは、盗用者が自分のサイトに取り込んで、自分がつくったコンテンツのように装うケースです。もうひとつは、大学生のレポートなどによく見受けられるケースで、盗用したコンテンツを紙媒体に出力して不正使用するパターンです。

今回の事案は前者です。K氏によれば、故郷の行事が書かれているコンテンツなので気に入ったそうです。そうであるならば変な小細工をするよりも、(言い訳どおりに)オリジナルコンテンツのページにリンクを張れば、それだけで済むことです。犯罪行為にもなりません。

この盗用者は、コンテンツの文章・写真だけでなく、ページのデザインを含めて、サイトをそっくりパクって、リネームして自サイトで公開しているわけですから、明らかに意図的な著作権(知的財産)を侵害する不法行為です。
会の代表者が広告関係の仕事をしているならば、著作権の何たるかについて知らないはずがありません。
削除すればいいのじゃなくて、まず、きちんとした謝罪とか、ほかにもすることがあるでしょう。九州男児も地に落ちたものです。

●講じた対策
そんなわけで、この事案以降、それまでサイト内の主要ページにだけ記載していた著作権表示である “Copyright, Shinji TAKAGI,1998-2002.All Rights Reserved.” の文字をすべてのページに表記するようにしました。
良識のあるみなさまにとっては、目障りですが、ご了解のほどを。

なお、ウェブサイトを公開されているみなさまにおかれまして、著作物の無断転載などの類似した事態が発生したとき、相手に抗議を行う前に、証拠を保存しておくために次のような防衛策をとることをお薦めします。

  1. 侵害行為を受けたページ(以下当該ページ)のURLを含めた全ページの保存(印刷)
  2. 当該ページのデータのダウンロード
  3. 当該ページのソースコードの保存(印刷)
  4. 検索画面のデータのダウンロードと保存(印刷)
  5. 当該ページの画面とページ情報(URL,最終更新日時など)を同一画面に表示し、デジカメ等で証拠を撮影
  6. 都道府県警察本部ハイテク犯罪相談部署への連絡、所轄警察署への届け出(刑事告訴の相談)

盗用発見はいつも Google 検索 から

この事案では、対応したK氏が最初は傲慢な態度をみせたものの、速やかに盗用したコンテンツをすべて削除したので、一件落着としました。いまならば、迷わずに50万円ほど損害賠償請求をするでしょう。
もし、反抗的な態度でそのまま掲載を続けたりすれば、このような大胆な著作権侵害行為は、刑事告訴に値する犯罪行為です。

盗用者は広告関係の仕事に従事しているようです。といっても、その業界はクリエィティブな人ばかりではないことは、ずっと後の東京オリンピック2020のロゴマークの盗用騒ぎで明らかになったとおりです。

さて、この最初の盗用案件を発見できたのは、優れた Google 検索のおかげです。
これ以降、すべての盗用発見には、Google の検索が寄与しています。

この事案が発生したころ、Google はまだ草創期でした。沿革から当時の状況をざっとながめてみると、次のような感じです。

  • 1998/09 Google 設立
  • 2000/06 Yahoo! のサーチエンジンに採用
  • 2001/08 日本法人のグーグル(株)設立
  • 2003/01 Appleと提携、Safariに標準検索エンジンとして搭載

2000年前後ですと、検索エンジンとしてgooやYahoo!もありましたが、やはりGoogle の検索エンジンの性能がずば抜けていたことは、20年が経過した現在の状況をみても明らかです。

これからもおそらく、盗用発見にはGoogle 検索が欠かせないでしょう。
逆に言えば、Google 検索が機能する限り、インターネット上に公開されている盗用コンテンツは、遅かれ早かれ、必ず見つかるということです。

刑事訴訟法では、ネット上で発見された時点まで「著作権侵害の犯罪行為が継続している」とみなされます。例え侵害行為を行った無断複製が10年前であっても、時効は成立していません。
盗人どもは、このことを肝に銘じておくべきでしょう。

いつかは著作権者に見つかります。
そして刑事告訴された場合は、ある日の早朝に突然、令状を手にした捜査員によって家宅捜索を受けることになるかもしれません。
その時は、もう「後の祭り」です。


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