河内の屋根つき橋 麓川(1)

屋根つき橋をたずねて四国の山里に

 屋根のついた橋といえば、ずっと以前、ベストセラーとなった小説『マディソン郡の橋』の舞台になった橋が有名である。写真集が出版されたり映画化されただけでなく、わざわざ橋を見に行くツアーがあったりと、アメリカの片田舎にあるいっぷう変った橋が、小説の主人公とともに一躍脚光をあびた。

今回訪ねるのは、愛媛県のとある中山間地域に架けられた小さな古い橋である。小説に登場したマディソン郡の橋と同じように田舎にある屋根つきの橋である。ただし、日本の屋根つき橋は、里山に囲まれた田んぼの風景に溶け込んだ純和風の橋だ。

「河内の屋根つき橋」は、正式な名前を「田丸橋」という。肱川の支流のひとつである小田川に注ぐ中山川のそのまた支流の麓川という小さな川に架けられている。

内子町五十崎地区を流れる小田川
屋根つき橋は正面奥に見える里山の懐にある

この橋に行くには、松山市から1時間ほどの距離にある内子(うちこ)町が出発点となる。内子は四国山地のなかに開けた小さな盆地にある。まちの中心部のすぐ南側には小田川が流れている。

内子から麓川を遡っていくと

 かつて、小田川を利用した舟運がさかんだった頃、ハゼの実を加工してつくる和蝋燭や和紙の原料となる楮(こうぞ)など流域の物資の集散地として栄えたまちである。川から少し離れた高台に位置する八日市地区には、製蝋業を営んでいた商家の漆喰塗り大壁など、江戸時代から明治にかけて建てられた家並みが残され、伝統的建造物群として今でも往時の面影をよく伝えている。

さて、内子のまちを離れて、お目当ての屋根つき橋に向かう。小田川から中山川へ、中山川から麓川へと枝分かれする川の支流に沿って道をたどる。JRの鉄橋をくぐり抜けて、川沿いのゆるやかな坂道をどんどん奥へ登っていく。今回は自転車で来たので、ペダルを漕ぎながらときおり川の瀬音を聞くことができる。


河岸にフジの咲く麓川の流れ

途中で道から離れて川のようすを見にいく。次第に勾配がきつくなり、里の川から渓流へと、川の様相も次第に変化してくる。

自転車で20分ぐらい走って少し汗をかいたころ、川を挟んで小さな棚田が何段かあるぽっかりと開けた場所にでた。道路の右側にある田んぼのなかに、屋根のついた田丸橋の姿が見えてきた。

麓川に架かる田丸橋

【次は】河内の屋根つき橋 麓川(2)


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