水神さまのいる川辺 筑後川 (1)

■筑後川と水神信仰

 筑後川の下流、久留米市瀬下町にある水天宮は、水難除けの神として全国に分布する水天宮の総本山である。伝承によれば、昔、球磨川に九千坊(くせんぼう)を頭目とする河童の一族がすんでいた。河童たちは、たそがれ時になると河畔に現れ、瓜やなすびなどを盗るために田畑を荒らしたり、人々に相撲を挑むふりをして川に引きずり込むといった悪さをしていた。

別伝もあるが、河童の悪行に怒った肥後の殿様が猿を集めて攻め立てた。懲らしめられた河童たちは詫びをいれ、久留米の殿様の許しを得て筑後川に住むようになり、水天宮のお使いになったと言われている。

筑後川の中~下流域には、こうした神社を基盤とした水神信仰に加えて、民間信仰としての水神信仰や河童にまつわる伝承がさまざまな形で伝わっている。水神や河童は、ときには水禍をもたらす荒神として恐れられたが、そのいっぽうで水難除けの守護神として崇められ敬われてきた。

■河畔に祀られた水神祠

 そのような土地柄なので、筑後川の川辺を歩いていると、水神が祀られた石造りの小さな祠や、神の依り代であることを示す竹が立てられている光景をしばしば見受けることができる。

菜の花に囲まれた春の水神祠

こうした筑後川流域における水神信仰のひとつとして、久留米市北野町高島地区に伝わる「お水神さま」という行事を紹介する。この「お水神さま」は、筑後川下流の農業集落に伝わる伝統行事である。水遊びの季節を間近に控えた7月初旬、筑後川の河原で水難除けを願って河童相撲が奉納される。

河畔に竹を立てて供えられた水神への供物

ここでは、準備の様子を含めて行事の概要を紹介しながら、この「お水神さま」が川辺に暮らす人々、なかでも地区の子供たちが身近に流れる川というものをどのように認識し、水禍なく川とつきあっていくために、この行事がこれまで果たしてきた役割について考えてみたい。

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