■北野町高島の「お水神さま」
福岡県三井郡北野町(2005年に久留米市へ編入合併)大字金島の高島地区は、筑後川に面した古くからの農業集落である。地区の南を流れる筑後川の堤防の土手には、百年以上の長きにわたって、筑後川と人々の暮らしを見守ってきた水神が祀られている。
筑後川に面して祀られた水神祠と狛犬
水神祠は、正面を筑後川の流れに向けて建立されている。下流側の側面には、寛政年間(1789-1801年)の年号が刻まれている。祠の前には左右1対の狛犬像があり、下流側の狛犬の台座には、「弘化二乙巳年」(1845年)の年号を読み取ることができる。地区の人々は、この祠に祀られている水神を「お水神さま」と呼んでいる。
■水難除けを願う「お水神さま」の行事
お水神さまの行事は、神官が祝詞をあげる神社のお祭りではないので、地区では「祭り」とはいわずに、水難除けの行事として代々伝えられてきた。もともとは7月5日というように日取りが決まっていたが、近年では準備などの関係で、7月初旬の日曜日が選ばれるようになった。行事は、水神祠近くの河原で行われる地区の男の子たちによる水難除けの奉納相撲と、その後のお花流しとによって構成されている。
夏を迎える筑後川
筑後川の流域では、こうした水難除けの相撲のことを「子ども相撲」あるいは「河童相撲」と呼んでいる。子ども相撲は、筑紫平野の各地にある地区や集落で古くから行われてきた。
たとえば、筑後川の左岸に位置する浮羽郡田主丸町の以真江(いまえ)地区では、支流の巨勢川(こせがわ)河畔にある徳満宮(とくまんぐう)で、毎年7月1日、「例祭」として河童祭りが行われた。常盤木でつくった輪くぐりがあり、夕方からは子供相撲が行われたという。
しかし、時代とともにこの子ども相撲を開催する地区も次第に減ってきた。福岡県下で筑後川の河原を舞台に子ども相撲が行われるのは、いまでは高島地区だけになってしまったようである。
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