■櫓継ぎ式
そうこうするうちに櫓継ぎ式の時間が近づいてきた。式は対岸の浜崎側で行われるため、船頭さんは小屋を出て岸辺につながれた舟の舫を解きはじめた。
空からポツポツと小雨が落ちるなか、式に列席する4人のお客を乗せて、船頭さんは通い慣れた川を渡ってきた。 船上のお客さんは鶴江地区のご婦人がたで、長年にわたってこの渡し舟を愛用してきた常連さんたちであろう。傘を片手に舟上に立つ姿が絵になっている。
慣れたお客さんは傘をさしたまま立って乗る
あいにくの空模様のもとで櫓継ぎ式が始まった。
この鶴江の渡しは市道の代りを果たしており、長年にわたって渡し場を守ってきた労をねぎらって、萩市長から感謝状が贈られる。船頭さんは直立不動で、やや緊張した面もちである。
市長からねぎらいの言葉を受ける船頭さん
感謝状が手渡されるとき、ちょっとしたアクシデントが起きた。
船頭さんは空模様を見越して受け取った感謝状を入れるビニール袋を用意してきていたのだが、傘と傘のすき間を抜けた雨粒が墨で書かれた感謝状の文字を汚してしまった。
感謝状は準備してきたビニール袋に
「もう一度書き直して、きれいなのを差し上げますから」という市長の言葉で緊張していた場が和んだ。
後任の船頭さんへ櫓が託される
こうして渡し舟の櫓は、江山さんから新しい船頭さんへと託された。