(95) 国際河川 白須川

 「国際河川」とは、数ケ国の領土を貫いて流れる大河で、川沿いの各国が条約を結んで、どの国の船舶でも自由に航行できるようにした川のことです。ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ルーマニアなどを流れるドナウ川がその代表例です。

島国であるニッポンには、本来、国際河川は存在しないはずです。しかし、工作員からの情報によれば、山口県北東部で日本海に注ぐ白須川が国際河川かもしれないとのことです。真偽を確かめるために3次にわたり調査隊を派遣した結果、国際河川であることが判明しましたので、この場を借りてご報告します。

全長がおよそ2800キロもあるドナウ川に比べて、この白須川の長さは10キロ足らず。地元の人以外には、ほとんど知られていない小さな川です。河口に山陰本線の惣郷川橋梁という立派な鉄道橋が架けられていることから、その筋のマニアには撮影名所として知られています。ちなみに、『惣郷』というのは河口近くにある集落の名前で、橋の近くには『川尻』というバス停があります。

惣郷川橋梁は、白須川をまたいで海岸線に沿って架けられており、長さ約190メートル、高さが約12メートルあります。
潮風や波飛沫にさらされる場所なので、錆びやすい鋼鉄ではなく、鉄筋コンクリートの柱と梁でできている構造形式が特徴です。列車に乗ってこの橋を通過すると、まるで海の上を走っているかのような錯覚に陥ります。

白須川の河口は、ちょうど橋の真下にあり、流れの幅は、わずか1~2メートル。この狭い河口をめぐって、海に出ようとする川の流れと、海から川に入ろうとする波とがぶつかり合って、しのぎをけずっています。

調査の結果、春から秋にかけては、川の流れが優勢のようですが、季節風の強い冬場は、波が圧倒的な底力をみせるようです。その結果、河口近くの河原には、ハングルや簡体文字のラベルが貼られたペットボトルなどがあちこちに転がっています。
どうやら白須川は、冬の間だけ季節限定の国際河川となり、大陸方面の各国から遠路はるばるニッポンにたどり着いたプラスチックの超小型船舶が川と海とを自由に行き来している模様です。


■Memo

・白須川/山口県
・撮影:2005/03、2006/07
・旧版公開:2006/07/17、改訂版公開:2017/02/10


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